・最近読んだ本(マンガじゃないよ :-)

「アジア古代文字の解読」 西田龍雄/中公文庫 BIBLIO

西田龍雄先生は,西夏文字の研究で高名な先生.この本は,西夏文字を含め,「ロロ文字(彝文字)」,「水文字」,「女真文字」,「契丹文字」といった東アジアの古代文字の解読や研究の状況について解説したもの.いずれの文字も漢字にさまざまな影響を受けつつ,自らの言葉を書き記すために独自の文字を開発したようだけど,既にその言葉を話す人もなく,残された資料のみから過去の言語を復元して,その言語を使っていた人々の思考形式までを考察していくあたりは高度なパズル解きを眺めているみたいで面白かった.

現実問題,こういう既に滅びてしまった言語を研究して何の役に立つのか,という批判は可能だと思うけど,純粋な知的遊戯としての研究というのも決して忘れてはいけないものだと思う.そう言えば,数学の難問の一つの「リーマン予想」を証明した,旨のニュースも cnet とかのサイトに出ていたっけ.「リーマン予想」は素数問題だから将来的には暗号数学あたりで実用性と関係することもあると思うけど,研究者自身は「何の役に立つのか」なんて考えてないのは滅びた言語の研究と通底するものがある気はする.

そう言えば,コンピュータの世界では,新しい言語は perl やら ruby やら常に生まれているのだけど,その言語を記述する記号のレベルまで作ろうとしたのは APL が最初で最後な気がする.もちろん「キーボード」というインターフェイスの縛りもあるのだけど,syntax や semantics のレベルを超えて,アルファベットを捨てたところから新規に作った言語がどういうものになるかを考えてみるのは空想実験として面白そうな気はするな.


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2021-12-17 (金) 16:35:41