・法律の文言

最近,神戸情報大学院大学(http://www.kobedenshi.ac.jp/kic/)の認可申請等
に関わっているので,大学院設置の根拠となる「学校教育法」とか「大学院設
置基準」とかを読む(まされる ;-)機会があるんだけど,このヘンの文章って
すさまじいですねぇ..

例えば,「専門職大学院設置基準」の第16条に「専門職大学院における在学期
間の短縮」についての規定があるのだけど,

  第十六条 専門職大学院は、第十四条第一項の規定により当該専門職大学院に入学する前に修得した単位
 (学校教育法第六十七条第一項の規定により入学資格を有した後、修得したものに限る。)
 を当該専門職大学院において修得したものとみなす場合であって当該単位の修得により当該
 専門職大学院の教育課程の一部を履修したと認めるときは、当該単位数、その修得に要した
 期間その他を勘案して当該専門職学位課程の標準修業年限の二分の一を超えない範囲で当該
 専門職大学院が定める期間在学したものとみなすことができる。ただし、この場合においても、
 当該専門職大学院に少なくとも一年以上在学するものとする。

これ,「ただし,」の前までの約 230 字が一つの文なんだよね.この前読ん
だ「うまい!日本語を書く12の技術」(野内良三/NHK出版 生活人新書)には,
「一条 短い文を書こう」,「五条 読点(,)は打たないようにしよう」という
指摘があって,「素直に読める一文は 50〜60字が上限」,という指摘がある
のだけど,それにことごとく反している文章ですね.

日本語の乱れや読解力の低下がよく語られるけど,そもそも日本語を教える教
育システムの大元である文部科学省が出している文章がこの調子だから,後は
おって知るべし,という印象.法律の条文というのは,いろいろな条件を列挙
して対応を述べる必要があるから必然的に長い文になるという話も聞いたこと
があるけど,そういうのは考慮すべき条件を箇条書にするとかで読みやすくす
べきだと思う.

「読みやすさ」という観点で眺めると,「日本国憲法」ってかなり名文なんで
すよね.ほとんどの条文が 1〜2 行で述べられ,列挙が必要な場合はちゃんと箇
条書にされている.例えば,教育関連で第26条,

 第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
 
 2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。
 義務教育は、これを無償とする。

これなんて誤解の余地がない,分りやすい文章の典型例だと思ふ.

もちろん,「理念」を語る憲法と,実際の状況における適用まで考慮しなけれ
ばならないそれぞれの法律の条文を同一の次元で比較はできないとは思うけど,「憲法」
という分りやすい文章(名文)の典型例があるのに,一文を延々と数百文字でつ
らねる悪文を書き続ける人々の営みは糾弾されてしかるべきだと思った今日こ
のごろ...

#comment

トップ   編集 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS