・「ガールズ&パンツァー」の魅力(その2)
「ガルパン」の最大の特徴は,戦車描写が精密なこと.
私自身はミリオタじゃないんで,「ガルパン」を見るまでは, 「戦車ってみんな同じに見える」レベルだったんだけど, 「ガルパン」でそれぞれ個性的に描かれた戦車を見てると, 「第二次世界大戦中のドイツとソ連の戦車開発競争ってこんなに凄まじかったのか,,」と思うことしきり.
「ガルパン」の場合,それぞれの戦車は3Dのモデリングデータを元に, CGI(Computer Generated Image)で2次元のアニメ画面に描かれているそうで, 原画や動画に人手を介さない分,全編を通して戦車の描画レベルが変らずに維持できている. CGIを使った描画は強力で,1話に出てくるIV号戦車から他の戦車の動きを長回しで眺めるシーンとか, (戦車の描画とはちょっと違うけど)ラストで画面をずーっと引いていって, これらのドラマが「学園艦」という船の上でやっているんだ,というのを見せつけるシーンなんて, 鳥肌が立つくらいびっくりした.
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」のラストが,同じことをやろうとしつつ, 当時の技術ではずいぶんショボい表現にしかできなかったのを知ってるだけに, 「今はここまで出来るようになったのか,,」という衝撃が大きかった. まあ、「ビューティフル・ドリーマー」からは30年以上経っているわけだけど。。
監督を始めとするスタッフ陣が戦車がホントに好きだから, それぞれの戦車の3Dモデルを作るために設計図を探しまわったり, 数少ない当時の映像資料を漁って参考にした旨がインタビュー等に紹介されていて, 確かにそういうこだわりが無いと,ここまでリアルな描写はできないんだろうなぁ,,と思うことしきり.
前回も触れたように,「ガルパン」のストーリーは「学園スポーツ物」の王道というべき単純な流れなものの, 視聴者がそれをうそ臭く感じず,素直に感情移入できるのは, これら戦車の細部にこだわる描写が「リアリティ」を担保しているおかげな気がする.
物語を作る際には, 「一つの大きなウソをつくために無数の小さなホントを積み重ねる」とよく言われるけれど, 「ガルパン」の場合,まさにその「無数の小さなホント」が戦車描写に代表される細部へのこだわりであって, そういうリアリティの積み重ねによって,弱小校が強豪校を倒して全国大会に優勝するストーリーや, 直撃弾をくらって大破しても「特殊なカーボン」のおかげで乗員はメガネが壊れる程度のケガしかしないというウソを, 視聴者に気にさせないことに成功している気がする.
そういう細部の積み重ねのおかげで, TVシリーズ全話を繰り返し見ても,「あー,それはないだろう」という批判的な見方じゃなく, 「それはそれでいいじゃん」という共感的な見方になって,使い古された「王道ストーリー」や 大破しても乗員はケガしないというお手盛りな設定が、(私も含めた)視聴者に素直に受け入れられている気がする(続く)