・産業革命の新しい説明
slashdot.org で見かけたのだけど,カリフォルニア大のGregory Clarkという歴史経済学者が 産業革命が英国で始まった理由の新しい説明 を発表したらしい.
従来の説明は,マックス・ウェーバー流のプロテスタンティズムの勤勉性や禁 欲性が富の蓄積を促し,それが産業革命につながった,というのが主流だった けど,Gregory Clark氏によると,中世イギリスでは富裕層と貧困層で子孫の数 が大きく異なり(富裕層の方が多い),世代を経るにつれて富裕層出身者が貧困 層出身者よりもずっと多くなり,その結果,倹約や慎重さ,根回しや勤勉といっ た富裕層の特徴が,浪費や衝動性,暴力や享楽といった貧困層の特徴に取って かわって社会の主流になり,その結果,産業革命につながっていった,という ことらしい.
彼は中世の遺言状を細かく調べて,世代を重ねるにつれて貧困層出身者に比べ て富裕層出身者の子孫の数が増えていくことからこういう結論に至ったらしい.
果して倹約や慎重さといった性格が世代を重ねるごとに伝わっていくのか,と いったあたりは疑問も感じるし,一種の社会進化・淘汰論として非難されそう なところも散見するけど,個人的には結構おもしろそうな視点だと感じるところ.
この記事の中では「日本や中国で産業革命が起きなかったのは,当時の富裕層 階級(日本だと武士,中国だと清王朝) があまり子孫を残せず,富裕層の子孫が 社会の主流を占めるには至らなかったからだ」そうだけど,江戸時代の日本の 記録とかを見ていると,勤勉や倹約,根回しといった特徴はすでに社会全体に 広まっていたと思うので,単に富裕層階級が増加しなかっただけでは説明がつ かないだろうなとも感じる.