[[diary/Kojima]]

・フェルメール展でがっかり

神戸ハーバランドでやっている[[「フェルメール光の王国展」:http://www8.kobe-np.co.jp/blog/vermeer/]]というのを見てきた.

去年,東京に通ってたころに,
東京(銀座だったか?)でやってるこの展覧会の紹介を機内誌やビデオで見て,
わりと興味を持っていたものの,東京では時間が合わずに見そこなったので,
神戸に来た,と聞いたので,よろこんで見に行ってみた.

これは,もともと原画ではなく複製であることは知っていたけど,
「現存する全フェルメール作品37点を最新のデジタルマスタリング技術によって、
約350年前に描いたであろう色調とテクスチャーを推測して、
原寸大で所蔵美術館と同じ額装を施して、細部の表現、光の意図を解釈しなおした作品」
ということで,ちょっと期待していたのだが,
実際に見てみるとずいぶんがっかりさせられる出来だった.

個人的には,美術品の「デジタルアーカイブ」の類いはかなり好きで,
美術館等で押し合いへしあいしながら遠くから強化ガラス越しに眺める原作よりも,
複製であっても,肉眼では見分けられないレベルまで拡大して観察できる
「デジタルアーカイブ」の方が,研究者にとっては優れているとすら思っているのだけど,
このフェルメール展では「原画を超えた光のマジック」とか名乗ってはいるものの,
実際に展示されている作品を見ると,多少色彩は鮮かになっているものの,
どこかの画集で見たのと同じような解像度の画像が,
原画に似せたようなテクスチャーの台紙の上に印刷されているだけだった.

「あれれ,今のデジタル技術でも,フェルメールの作品ってこんなものなのかな?」
と感じていたのだけど,最後の方のコーナーで"re-create"なる手法について
紹介しているのを見ると,
「最新の高精細の非接触スキャナで原作をスキャンすることは困難なので,
フェルメールセンター・デルフトから提供を受けた画像素材を最新技術で再創作した」
ということで,何のことはない,今まで画集等でよく見ている画像データを,
オリジナルっぽく加工しただけのものだった.

元の画像データが既存の画像素材ならば,
色彩等をどう加工したところで元の画像の解像度以上の細部までが見えるようになるわけはなく,
「どこかで見たような画像だなぁ」という第一印象は間違ってなかったようだ.

このレベルの処理を"re-create"と呼ぶのは原作者に対する冒涜で,
せいぜい"re-touch"とでも呼べよ,
出口近くにあったアンケートには罵詈雑言を書き込んでしまったのであった.

#comment

トップ   編集 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS